第10号目の今回はファッション系のニュースレターを取り上げた。ファッションに関する情報はネット上に溢れている。カッコいい服を来た人ならインスタを見ればたくさん出てくるし、動画でも写真でもファッション情報はほぼ無限に無料で手に入る。そんなファッション情報に「これはお金を払ってでも欲しい!」と思ってもらうにはそれなりの理由がいる。正にそんな事例があったので、その紹介と分析をした。
このニュースレターはコンテンツのクリエイター、課金モデルを成り立たせたい人に向けて書いている。
個人でニュースレターの運営に成功している例を毎回ひとつとりあげ、そのコンテンツを徹底的に調べてビジネスモデルの仕組みから、なぜそんなにウケているのか、を独自分析してレポートする。あなたがクリエイターならとても参考になるはず。
👫 もくじ
ニュースレター成功事例の影で
メディアごとに変わる戦略
ニュースレターとブログは違う
コンテンツを気に入るブログ、企画を気に入るニュースレター
ニュースレターの企画に必要な3要素
【他人のニュースレターを勝手に分析】課金され続けるファッション系ニュースレターの秘密
ファッション業界の裏側
ビジネスモデル
独特の顧客ターゲット
熱い顧客層からの熱い支持
そこにしかない有益な情報
とてもシンプルなミッションからスタート
有料情報の壁を活かす
多彩な商品群に共通のコンセプト
グラム・オブザーバーの企画の3要素
みなさんからのご質問と回答
匿名のコメント(マシュマロから)
Pogre | 中国語学習中さんのツイート
前回のアンケートの結果
あなたがクリエイターならぜひ購読
🐑 ニュースレター成功事例の影で
旅行好きなクリス・アーネイド氏は旅行で感じた様々な人との出会いや現地の様子をニュースレターにすることにした。購読料を月に7ドル(約930円)に設定したところあっと言う間に1000人以上の有料購読者を獲得した。その収益は最低でも月に90万円以上にもなる。今ではニュースレターの収益を元に世界中を旅しながらニュースレターの運営を続けている。
(詳しくは第7号の「お金を払ってでも欲しい旅行情報を提供するニュースレターとは」へ)
著者のクリス・アーネイドさん
ニュースレターというプラットフォームは個人のクリエイターに新しい収益源をもたらした。
しかし話はここで終わらず続きがある。
クリス・アーネイド氏の旅行ニュースレターと同じく旅行をテーマにしたニュースレターはたくさんある。Googleで英語で「旅行 ニュースレター」と検索すれば山ほど見つかる。しかしクリス・アーネイド氏のように収益化に成功している例よりも、むしろ失敗している例の方が実は多い。
その原因のほとんどは「せっかくのニュースレターをブログのように扱ってしまっていること」になる。
🍊 メディアごとに変わる戦略
情報発信の戦略はメディアやプラットフォームごとに異なる。ツイッター、インスタ、YouTube、ブログ、note、ニュースレター、といろいろあって同じ情報でもどこから発信するかによって当然、戦略は変わる。
例えばツイッターとブログは同じ文字情報がメインだとしても、その2つの特性は大きく異なる。
ツイッターに入れたツイートとまったく同じ内容をブログにそのまま140文字以内で掲載することは誰もやらない。「今日、食ったラーメンが旨かった」ってツイートはツイッターだから成り立つ訳で、そんな短い内容のブログ記事は読者からすると「はぁ?」となってしまう。
これはツイッターのデザインがハッキリと「ブログじゃないですよ!」となってるから分かりやすい。
それに引き換えニュースレターは一見するとまるでブログのように見えてしまうから落とし穴になってしまう。
🕺 ニュースレターとブログは違う
ニュースレターとブログは異なる。ひとつの例はニュースレターには発行タイミングがあること。
別に必須ではない。でもニュースレターを創刊する際には、ハッキリとした定期的な配信日を指定した方がいい。例えば「毎週月曜日の朝に配信します」と宣言する。
ブログのように「不定期更新です。いつ何曜日に発行するかは分かりません。気が向いたら書きます」ってのは良くない。これは読者の立場になって購読ボタンを押す時の気持ちになればご理解いただけるだろう。
購読ボタンは重い。押して登録するとメールでコンテンツが直接入ってくる。よっぽど気に入っていて、内容に共感がなければ購読なんてしない。
不定更新のニュースレターというのは、いつどれぐらいの分量で発行されるのか分からない。そんなニュースレターの購読はどんなにコンテンツが気に入っていてもためらってしまう。
読者が「うーん。このニュースレターはブラウザにブックマークしておいて、時々ブラウザから見れば十分かな」とブログのように思われて終わりだろう。
そうなってしまうと読者とメールを通して直接の繋がりを作ることができるニュースレターの1番の強みを活かせなくなる。その先のサブスクも有料課金も無くなるのだ。
🐾 コンテンツを気に入るブログ、企画を気に入るニュースレター
ブログの場合はそこまでテーマは重要にはならない。どちらかというと書き手に対する支持で集まるブログはその書き手に個性があれば、気の向くままにコンテンツを出していても、コンテンツの質に応じてPVが得られる。よく言われるようにブログでは「Content is King(コンテンツこそが王様)」なのだ。
ところがニュースレターではそうしたひとつひとつのコンテンツよりも、むしろそれら全体を貫く企画の方が重要になる。
読者があるニュースレターの購読ボタンを押す時は目の前のコンテンツだけを見て判断しているのではない。そこから続く未来のコンテンツに対して期待をこめて購読ボタンを押している。
確かに目で見ているのは目の前の現在のコンテンツだけになる。しかし頭の中で考えているのは「なるほど。こんな内容とテーマのコンテンツが毎週送られてくるのか。このテーマは私の興味がある内容だから購読するかな」となっている。
つまりひとつのコンテンツからも、そのニュースレター全体を貫くテーマを感じてもらう必要がある。テーマと言っても世界平和とかそんな大げさなモンではない。
このニュースレターは誰に向かって、どんな内容で、どのぐらい届くのか、ただそれだけだ。
そこをブログと同じように「不定期に気が向いた時に書きます。内容はその時々で思いついたオレが思うすげーホットなトピックについて書きます。めっちゃいい話題を提供します」とやってしまうと失敗する。
👓 ニュースレターの企画に必要な3要素
テーマ => 全てのコンテンツに一貫した内容
読者ターゲット => 誰に届けるのか
配信スケジュール => いつどのぐらい届くのか
これがしっかりあればあなたのニュースレターは創刊する前からもう半分は成功していることになる。
今回、分析するニュースレターはそれにピッタリな事例。ファッション情報というレッドオーシャンの市場にも関わらず、ものすごく成功しているニュースレター。
分析レポートの前にひとこと
ここまでメールで読んでいただいているあなたへ。ご購読ありがとうございます!
ここまでウェブブラウザで読んでいただいているあなたへ。ぜひ購読をお願いします。
【他人のニュースレターを勝手に分析】課金され続けるファッション系ニュースレターの秘密
今回とりあげたのはGlam Observer(グラム・オブザーバー)のニュースレター。ファション系のウェブサイトで、顧客とのコミュニケーションとコミュニティ運営においてSubstackを通してニュースレターが発行されている。ファションカテゴリーの中ではトップクラスの人気のニュースレターになっている。
グラム・オブザーバーの創業者であるGiada Grazianoが最初は個人で開設したブログからはじまる。ブログ→オンラインコース→ポッドキャスト→ニュースレターと次々に新しいメディアへ進出を果たした経緯を分析するととても参考になることが多い。
著者のGiada Grazianoさん
👚 ファッション業界の裏側
グラム・オブザーバーのニュースレターではファッション業界の裏側で起こっている様々なニュースや業界情報がレポートされている。
その週のファショントップニュースの解説がある。例としてあるブランドの有名クリエイティブ・ディレクターが移籍して、その内情が詳しくレポートされていた。
各ブランドの服のみならずビジネス的な展望が分析してレポートされている。ファション業界のキャリアアドバイスもあり、その内容はかなり具体的。毎回定期的にファッション業界の求人情報が入っている。
全体を通して感じるのはいわゆる人が「ファション雑誌」とか「ファッション情報」と聞いてイメージしているのよりも切り口や内容がかなり深い、ということだ。
🏦 ビジネスモデル
ニュースレター自体は月に7.35ユーロ(約1055円)で有料コンテンツを読むことができる。配信タイミングは週に5回。それだけではなく、別途オンラインコースやポッドキャスト、などもGlam Observerには入っている。
なのでニュースレターはそれらの本格商品の入り口として活用されている。
以下になぜこのニュースレターがファッションの分野でなぜトップクラスの人気になっているのか、の分析結果をレポートする。
🦸♀️ 独特の顧客ターゲット
グラム・オブザーバーのニュースレターの購読者ターゲットは独特だ。購読者ターゲットは「ファション業界を目指してそこで働きたい人達」になる。元々は著者のGrazianoさんがコネ無し、学位無し、でファション業界に飛び込もうとするが悪戦苦闘した経緯をブログにしたのがはじまり。
なんとかファション業界に入り込めた後にもその業界独特の習慣にいろいろと思うことがあって、後続の若い人達に向けて「どうすればトップブランドのデザイナー職が獲得できるのか?」「どうすればコネ無しでも憧れのファション業界に入り込むことができるか」を情報発信することにした。
そんな情報発信と活動の中で次第にファッション業界で働く人達、ファッション業界を目指す人達のコミュニティができあがり、そのコミュニティツールとしてニュースレターが利用されるようになった。
つまり同じファッション系の情報でも単に「洋服やファッションが好きな人」としてしまうと熱量が下がってしまう。単なるファッション好きに送る情報で課金してもらうのは至難の業だろう。
しかし熱量の高い読者ならそれが可能になる。
🎁 熱い顧客層からの熱い支持
ファション業界を目指してそこで働きたい人達は単なるファッション好きよりももう1段階上の熱量がある。彼らにふさわしい情報を提供すれば課金してもらえる。その意味でこの読者ターゲットの設定は素晴らしい采配と言える。
これは前の回でIT系ニュースレターの分析記事「エンジニアが技術系じゃないニュースレターで年間3000万円を売り上げてる理由」や旅行系ニュースレターの分析記事「お金を払ってでも欲しい旅行情報を提供するニュースレターとは」での分析と共通する内容になる。
それは人気のニュースレターはその分野の中でも特に熱い顧客層をターゲットにして、そんな人達の心をガッチリ掴んでいる、ということ。
分野もコンテンツ内容もまったく異なるニュースレターであるが、それらにはある種の共通項がある。
🍿 そこにしかない有益な情報
グラム・オブザーバーにはそこにしかない情報が多くある。そのほとんどは一般の人が見ても「あーそう」って程度の情報だったとしても、グラム・オブザーバーの購読者にとっては喉から手が出るほど欲しい情報ばかりだ。
ある記事でかなり具体的なアシスタント職を得る方法が解説されていた。ミラノやパリでファッションウィークがあると、大手ブランドが様々なファッションショーを開催する。とても忙しい時期になるので、そこで一時的なアシスタント職の応募が多数出てくることになる。
それに応募するのだが、ポイントは一時的に使われれ捨てられるのではなく、そこでいかにコネを築いて次のポジション獲得に繋げるか。また繋がりそうなアシスタント職に応募するのか、を解説されていた。
こうした特定の読者に深く刺さる情報があるのが人気の秘密だろう。
🙆♂️ とてもシンプルなミッションからスタート
グラム・オブザーバーにはシンプルなミッションがある。それはファッション業界を目指す人を支援して、ファッション業界をより良いものにしていくことだ。
ファッション業界というのは憧れ産業でもある。カッコよさを売り物にしていることから、「入りたい!」と強く思う人達が跡を絶たない。そういう事情があることから、職場でもセクハラやパワハラ、不当な労働搾取が根強くある業界だ。
グラム・オブザーバーはあやゆる情報を公平に伝えることでより業界が良くなることを目指している。記事の中には「**のブランドは人気かもしれないが、労働環境はとてもいいとは言えないしオススメしない」とハッキリ書かれているのもあった。
これこそが正にグラム・オブザーバーがファッション業界をより良くするミッションに従った記事だ。そういうミッションが口先だけではなくコンテンツの全てに貫かれていることを感じるし、それが読者に支持されている理由なのだろう。
🧥 有料情報の壁を活かす
グラム・オブザーバーの多くの情報は有料購読者だけに公開されており、その中身は実名であったり実際のブランド名がしっかりと書かれている。一般公開されている場で「**というブランドの労働環境はダメ」とか書くと名誉毀損になるリスクもある。
しかしこうした情報を有料購読者だけに公開するのは単なる野次馬的に興味本位で見たがる人を除外できる。そして本当に仕事のために必要な人に情報を届けることで、相互の意見交換や信ぴょう性を測ることが可能になる。
その意味で有料情報の壁を上手く活かした例になっている。
🎩 多彩な商品群に共通のコンセプト
グラム・オブザーバーは他のニュースレターサイトと比較するとその商品群が多い。オンラインコース、ポッドキャスト、デジタル書籍、有料ニュースレターなど。全ての商品には「ファッション業界で働きたい人達の助けになること」という共通のコンセプトから成り立っている。
通常、たくさんの商品群があるとそれぞれが何を目的として作られたのかも不明になってとっ散らかり、ぐちゃぐちゃになることが多い。
グラム・オブザーバーでそれがまったく無く、どんな商品であってもスッと内容が分かるのは共通のコンセプトを貫いているからだろう。
🏝️ グラム・オブザーバーの3要素
前の章で解説させてもらった3要素をグラム・オブザーバーに当てはめてみる。
テーマ
憧れのファッション業界で仕事を得る方法
読者ターゲット
ファッション業界を目指す学生、インターン
配信スケジュール
週5回
いちいちこうして書かなくてもどれかコンテンツのひとつを見ればスグに伝わる。そんなコンセプトを1瞬で伝えてしまう強さこそが成功要因だと感じた。
以上です。
🧐 みなさんからのご質問と回答
このニュースレターでは常時みなさんからのご意見とご質問を募集しています。なにかあればぜひください。
特に質問が欲しいです。ニュースレターに関することならなんでもOkです。ぜひご質問ください。
匿名のコメント(マシュマロから)
> このニュースレターを誰かにオススメやSNSでシェアしたことはありますか?
YES まず興味がそそられていることが第一の理由です
そして卑近な理由ではありますが、ジャバ様のニュースレターは日本において最先端であると感じており、これを早い段階で知っていることは一種の優越感があるので、シェアしているという気持ちもあります。 一種の選民意識的なものですね。
(これを自覚して、他人に言うのも恥ずかしいところですが、役に立つと思ったので記載しました笑)
素晴らしいコメントありがとうございます!
「優越感」とまで言っていただけてとても嬉しく思っています。できるだけ多くの購読者の方にそうした「最新のいい情報が届いてる!」と思っていただけるようにがんばります。
ちなみに今1番課題に感じているのはシェア数を伸ばすことです。
みなさん、今回の内容はいかがでしたでしょうか?もし気に入っていただけましたらぜひシェアをお願いします。
Pogre | 中国語学習中さんのツイート


要点メモありがとうございます!
こうしてまとめてツイートしていただけると、とてもありがたいです。まだまだ購読者数を伸ばさなければならない時期なのでとても嬉しかったです。
ということでみなさんもぜひシェアをお願いします。
前回のアンケートの結果
質問内容
分析で取り上げるニュースレターのどんな部分を重要視しますか?
結果
運営方法が参考になること
58%
テーマが自分の興味や仕事と同じ分野であること
21%
内容がユニークであること
12%
ものすごく儲かっていること
9%
アンケート結果で参考になったのが「ものすごく儲かっていること」を気にされる方が9%で4つの項目の中で最も低かったこと。この「【週間】1万ドル以上を稼ぐ個人サブスクメディアを徹底的に分析したらこうなった」を創刊した最初のころは儲かっていることが重要だと思っていた。
タイトルも「月に150万円を稼ぐニュースレター」とか「月に120万円を稼ぐニュースレターの秘密」と、とにかく金額を入れていた。でも本当に金額にみんな興味があるのかな?と疑問もあった。
それを確かめる意味で、このアンケートは参考になった。
実際のところ本当にここで発信するべき情報は「その儲かっているニュースレターがどんな運営方法をしていて、儲かっている理由はなにか」という点に尽きることが再確認できた。
アンケートめっちゃ参考になりました。ご回答いただいたみなさん、ありがとうございます!
課題は購読者数
現在の購読者数は703人。ご購読いただいたみなさん、ありがとうございます!
ただどうすればこの先、購読者数を伸ばせるのかのアイデアが無くなりつつある。コンテンツの質を高めるのは必須のこと。それ以外になにができるのかを考え中。
なにかご意見やアイデアがあればぜひください。みなさんからのコメントいつもとても参考になってます!
🏌️♂️ あなたがクリエイターならぜひ購読
あなたがクリエイターで少しでもニュースレターの発行を考えているのなら、ぜひこの「1万ドル以上を稼ぐ個人サブスクメディアを徹底的に分析したらこうなった」を購読してください。あらゆるニュースレターのノウハウを詰め込んでます。きっと参考になるはず。
ではまた次回の月曜日の朝にお会いしましょう。まだ未購読の方はまた次回に会うために購読が必要ですよ!
ナカジさん、コメントありがとうございます!
ナカジさんの「What's To Come」いいですね!まだ全部は読み切れてないのですが、私の興味のある範囲とかなり重複しているのでこれから時間をかけてじっくり読ませてもらいます。
コンテンツ一気見ました。非常に面白い考察・コンテンツありがとうございます!
自分もベンチャーキャピタルで働く中で情報発信が重要になってくるんですが、メルマガもブログもつくっており、その使い分けは悩んでおりました。
今は濃いコンテンツ(リサーチ系)などはメルマガ
軽いポエムコンテンツはブログ
にしているんですが、なかなか使い分けが難しいなと思いながら運用しております・・